吊るされた棺/Hanging Coffins
2019年9月某日。
私は崖に吊るされた棺があるフィリピンのサガダを訪れた。
以前TV番組で小さく紹介された事をきっかけに、行きたいと思っていたが今回、フィリピンのアンヘレスという場所に1ヶ月ほど滞在する予定が出来たので、この機会に行ってみることにした。
とは言っても、アンヘレスからサガダまでは長距離バスを乗り継いで10時間以上かかる場所にあるため、いつもより気合を入れて3連休の初日から出発することに……。
朝9:00___。
アパートの近所にあるダウ・バスターミナル(Dau Bus Terminal)へ向かう。

まずはここから150kmくらい北にある【バギオ】という街を目指すのだが、バスがいつ発着するかなど事前に調べていなかったので、とりあえずバギオ行きを待つことに……。

1時間後___。
フロント部分に【Baguio】と書かれたバスが現れる。
早速、このバスに乗り込む。
指定席ではなさそうなので、適当に空いている席へと座り出発を待っていると、何人もの売り子が飲み物やお菓子を販売しにバスの中へと入ってくる。日本では無い光景だ。
私も水を購入したところで、バスが動き出す。
最初は高速道路のような道を快走していたが、次第に険しい山道へと入る。車酔いを避けるため、日本から持参した男梅を補充。
4時間後____。
バスがバギオに到着する。


正直、かなり田舎まで来たと思っていたが、想像以上に大きな街で驚いた。
4時間バスに揺られ体はしんどかったが、目的の場所はここではない。私は降りたバスターミナルから1kmほど北に進み、今度はサガダ行きのバスが出ているターミナルまで移動した。
しかし!

時刻はすでに15:00を回っていたが、サガダ行きは13:00で終了した模様。
どうやら今日はバギオに泊まるしかないようだ。想定ではバギオからサガダまで6時間~7時間かかるので、狙いは始発の5:30だ。
私は近くのホテルを急きょ予約し、明日に備えた。
ちなみにバギオには聖堂や大きな公園があったりと、なかなか観光地としても面白そうな場所だった。


翌日 早朝4:45___。
辺りが真っ暗のなか、再びバスターミナルへと向かう。


私が着いた頃には既にバスが到着しており、近くの窓口でチケットを購入しバスへと乗り込む。水筒とパンを片手に6時間の道のりを覚悟する。
途中、2回ほどインターチェンジの様な場所に立ち寄り、山道を右へ左へと揺れること6時間。
ようやくサガダに到着した___。

絵に描いたような山村だ。
フィリピンらしく子供たちを中心に人はたくさんいた。
何だか素敵な教会もあったりする。

現在の時刻は12:00。
出来れば今日中にバギオまで戻りたいところだ。もしサガダでも1泊することになると、アンヘレスのアパートを含めトリプルブッキングになってしまうので、勿体なさ過ぎる……。
早速、Google Mapを頼りに吊るされた棺を探してみる。

それにしても良い天気だ。
フィリピンに来てから一度も天候に恵まれていなかったので、これだけ晴れてくれたのは嬉しい。
そんなことを思いながら、1kmほど歩くと入口らしき場所に到着___。

これはかなり険しい感じだが、本当かよGoogle Map。
とは言え時間もないので、さっそく山道を登り始める___。
日本ではサバイバルキャンプと題して、よくこんな道を遭難していたので何だか懐かしい感じがした。

とイキってみるが、ものの10分で息苦しくなった。
標高のせいか年齢のせいかは分からないが是非、前者であって欲しい……。
次第に斜面がきつくなってきた。

これは油断すると滑り落ちてしまいそうだ。
すると対岸に何やら雰囲気のある崖を発見する。

よーく見ると____。

棺らしきものが見える。
どうやら、もうひと踏ん張りのようだ。
しかし、いよいよロープなしでは降りられなくなってきた。

数年前までは必ずパラコードを持っていたのだが、使わないだろうと置いてきたことを後悔……。
私はここからのアタックを諦め、再びバス停へと戻った。
時刻は14:00___。
帰りのことを考えると、それほど時間は残されていない。
改めてGoogle Mapを確認すると、どうやら最初に見かけたあの教会の奥に何かありそうだ。
確かに教会と棺の関連性から考えると十分にあり得ることだ。
私は教会の横道を抜け奥へと進む___。

するとそこには1つのテントがあり、女性が数名いた。私が棺の場所を尋ねると何故だか紙を手渡される。そして名前や国籍、住所などを記入させられ、お金を徴収される。
どうやらこれより先に進むには、ガイドが必要だとのこと……。
想定外の事ではあったが、ココで間違えはないようだ。
ガイドのおばちゃんと共に山道を進む___。

他愛のない会話をしながら進むと、墓地が見えてきた。

吊るされた棺とはまた別のものだが、ここもまた素敵なお墓だ。


この墓地を抜けさらに、山道を進む。
先ほどまでの獣道に比べると舗装されている分、楽な道のりではあったが、この暑さの中、平然と歩くおばちゃんはただ者ではない……。


そんなことを考えながら歩いていると、目的のそれは突如、姿を見せた。

確かに崖にかけらた複数の棺。
新しい物から古い物まで、形さまざまな棺がそこにはあった。
引きで見るとこんな感じ___。

おばちゃんの説明によれば、より天国へ近けるという意味で崖にかけられるとの事。死者は胎児のポーズで納められるらしいが、輪廻転生の考えがないキリスト教において、なぜ胎児なのか……。
また棺と共に椅子も崖にかけられているのだが、それは死者が座るためにあるらしい。何故、死者が座るのかも、私の英語能力ではおばちゃんの説明が理解できなかった……。
その後も幾つかの箇所で見られる棺をカメラに収める。


この場所の様に自然と一体化した文化や歴史の遺産は世界各国にあるが、崖に吊るされた棺をこれだけの数見れるのは他にはないだろう……。
私は1時間ほどこの場所を探索し、教会へと戻った。
ひとつひとつのポイントで丁寧に説明をしてくれたガイドのおばちゃん。最後はバスの時間も教えてくれ、その日のうちに無事バギオまで帰ることが出来た。
世界的にも珍しい葬法を見れ、22時間以上のバス移動も報われた気がする。サガダはとても素敵な場所だったので、次回はゆっくりと観光してみたい。
Hanging CoffinsLocation: Sagada Philippines
Shooting date: 09/2019
category: Cemetery & Funeral
I went to the place I wanted.
I was moved by this mysterious place.
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