クロントゥーイ区/Khet Khlong Toei

【シリーズ 世界のスラム】

2024年1月某日、タイ王国のバンコクにあるクロントゥーイ区を訪れた。この場所は以前に'廃線スラム'として紹介させて頂いたエリアだが、あれから5年ほど経過しているので再度、訪れることにした。事前情報では今なお、貧困層の方が住むエリアとして知られているようだ。調査には、十分な配慮と注意が必要である。※プライバシーの観点より一部写真の顔を加工しております。

こちらがクロントゥーイ区にある地下鉄駅付近のようす。
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ビルやコンドミニアムが立ち並び、近年のバンコクを象徴するような雰囲気である。ちなみにクロントゥーイ区はバンコクの中でも人口が多いエリアであり、以前は隣接するプラカノン地区もクロントゥーイ区の一部であったが、現在は区分されている。

今回は私が調査するエリアはクロントゥーイ区の南に位置する場所である。この辺りには廃線沿いに、多くの家屋が並び、独自のコミュニティを形成している。そして、現在は使われていない踏み切りの先が、その入り口である。
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今回は2度目の訪問ということで、線路に立ち入ることに抵抗はなかったものの、一応、近くにいたバイクタクシーのお父さんに線路内への立ち入りが問題ないか確認した。万が一、ここが廃線ではなかった場合、大変な事故になってしまう可能性がある。

お父さんの回答を頂き、いざ線路内へと進む。
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少し進むと線路内を歩く、現地の方が見えてきた。また線路内には似つかない洗濯物も確認できる。恐らく、廃線上のコミュニティに入ったようだ。

ヨーロッパのスラムに比べると幾分、緊張感はない東南アジアのスラムだが、外国人観光客が容易に来る場所でない事は間違えない。気分を害する方も少なくはないだろう。皆さんの顔色を見ながら、数枚の写真をカメラに収める。
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以前に訪れたエリアと比較すると、年季の入った建物が多い気もするが、それでも電気は開通しており、確かにスラム街と呼ぶには程遠い雰囲気である。

ちなみにクロントゥーイ区の歴史は深く、第二次世界大戦まで遡る。当時、クロントゥーイ区にあるバンコク港や米軍基地の建設が重なり、多くの労働力がクロントゥーイ区に集まった。多くの住民が定住し、自宅を建設したのが起源とのことだ。ちなみに以前は'クロントゥーイ・スラム'と呼ばれていたが、現在は'クロントゥーイ・コミュニティ'と呼ぶのが一般的なようだ。
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そんな私に一人のお母さんが声をかけてくれる。さわやかな挨拶であった。せっかくなので、スラム飯を頂こうとお母さんにお腹が空いている旨を伝えたところ、近所に食堂があるとのことだ。わざわざ家から出てきて行先を示してくれる。

お母さんの案内は線路沿いにいる住民の方たちによって口頭で伝達され、私は無事にクロントゥーイ区にある食堂へと到着した。こちらが食堂のようす。
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期待大の素晴らしい佇まいである。さすがに孤独のグルメ 'Kodoku no Gourmet(Japanese Manga)'の井之頭五郎も見つけたことはないだろう。

中には数人のお客さんまたは家族がいた。最初は突如現れた謎のオジサン外国人に警戒をされたが、お腹が空いていることを伝えると、快く店内へと案内してくれた。こちらが店内の様子。
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私のためにテーブルにスペースを作ってくれた。まだ食事中だったようなので、少し申し訳なかったが、狭い店内で、お母さんと肩を並べて食事を頂くことになった。私がタイ語が分からない事が問題なのだが、コミュニケーションには結構苦戦した。それでも何だか楽しい雰囲気であることは間違えないようだ。そして何故か、お母さんたちと私の即席ツーショット撮影会が始まる。

そんなこんなで注文した料理が着丼。
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勝ち確定のビジュアルである。挽肉ではないものの、バジルや赤唐辛子が入っている事から、ガパオ系の料理であることが分かる。頂いてみると、良い加減の辛さと肉の美味さ、東南アジアを感じさせてくれるスパイスの味。大当たりである。

観光地で食べる豪華な料理も良いが、私の性分としては、こういった庶民的な食堂で食べる方が緊張感もなく、料理を楽しむことができる。そして唯一、知っているタイ語'アロイ'を連発することで、みんな笑ってくれた。お値段も言い値なだけに、高額請求が待ち受けている可能性もあったが、ペプシと合わせて68バーツ(約293円)と親切プライスであった。みんなに別れを告げ、線路内の探索を再開する。
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上の写真は線路沿いにあるコインランドリーのようす。バンコクのローカルなエリアへ行けば、たまに見かける光景なのだが、確かにクロントゥーイ区のようにご近所との繋がりが強い地域であれば、何だかこのような雰囲気のコインランドリーも悪くはない。

そろそろ線路を抜けるという場所に差し掛かったときに、何だか面白いものを発見する。
_DSC1742_20240416.jpg 恐らくお米で作られたであろう器のような物が天日干しされていた。あまり見かけたことのないものだが、恐らくお供えものとして使われるものだろう。以前、インドネシアのジャカルタのスラムでも、同じようにお供え物のお米が天日干しされているのを見かけたが、このように器になっているものは初めて見た。

楽しかった線路上の探索が終わり、続いてはクロントゥーイ区で最も有名な場所のひとつであるクロントゥーイ市場周辺の調査へと入る。
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セパタクローを楽しむ若者たち。タイでは結構、人気のスポーツなようで、滞在したアパートの近くにある車の整備工場では、毎晩のようにセパタクローに励む人たちの姿を目撃している。確かにタイの国技であるムエタイの蹴り技に通ずるものが、ある気もする。

そしてクロントゥーイ市場周辺へと到着した。
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この辺りの建物は、先ほどの廃線に並ぶ住宅街よりは幾分、背の高い長屋のような建物が並んでいる。このエリアの北に位置するクロントゥーイ市場も、なかなかのストロング市場なので、別の記事で紹介させていただく事にした。

クロントゥーイ市場周辺には川が流れており、さきにご紹介したバンコク港も近くにある。しかし、この川は以前から汚染やゴミの問題が多い場所である。
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現在は、だいぶ綺麗になってきたが、以前訪れた際にはプラスチックの袋やペットボトルが多く流れていることを覚えている。日本ではそれほど、気にする機会が少ないプラスチック製品のゴミ問題だが、東南アジアへ来ると、その深刻さを感じることが多々ある。

また東南アジアで良く見かける光景と言えば、これである。
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電柱が見えなくなるほど、絡み合った電線たち。日本では災害時に道路を塞いでしまう可能性があることから、都市部などでは、電線を地中に埋める計画も進んでいるようだが、東南アジアへ行くと鬼電線なエリアが多くある。クロントゥーイ区はそうではないと思うが、場所によっては盗電のために、勝手に繋げられた電線などもあったりする。

その後もクロントゥーイ区を巡回していたが、2時間ほどで体力の限界が訪れたため、調査を終了することにした。
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今回は前回訪れた時よりも、広範囲の調査となったが、特に危険と感じるシーンもなく、相変わらず優しいタイの方たちと楽しい時間を過ごすことができた。

近年、急激な経済成長を遂げる東南アジアにおいて、クロントゥーイ区のような素敵なローカルエリアが残ってほしいと思う一方、目に余る貧富の差が、これ以上起きないことも願うばかりである。
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おわり。

Khet Khlong Toei

A residential area on an abandoned railway line in Bangkok, Thailand. While it is a local and attractive area, it is also an area where many people live, so consideration needs to be taken.

Location: Bangkok Thailand
Shooting date: 1/2024
Category: Slum&SpecialArea
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