ディラ地区の市場/Deira Market
【シリーズ 世界の市場】
2023年8月某日、アラブ首長国連邦のドバイにあるディラ地区を訪れた。このディラ地区はドバイの中でも市場が密集するエリアとして知られ、『スパイス・マーケット』、『オールド・マーケット』、『ゴールド・マーケット』などが有名である。今回、短い期間であったが、ドバイ滞在に合わせして、ディラ地区を訪れた次第である。
こちらがディラ地区にある駅『Al Ras Metro Station』のようす。
ドバイ・クリークという入江に隣接する駅で、ドバイの中心街と比較すると高いビルなどはなく、何だか良いローカル感がある。しかし、何より地下鉄の駅から外に出ると待っているのは、40℃を超える外気である。とくにアラビア湾に面するこの場所では海風も激しく、数分立っているのも過酷である。これはさっさと市場の調査を進めないと危険な状態に陥るだろう。早速、市場へ向かい歩き出す。まず目指すはスパイス・マーケットである。
上の写真はディラ地区から見たドバイ・クリークとアルファヒディ地区の様子である。アルファヒディ地区には18世紀頃に建てられた要塞などアラブの伝統的な建築物があり、観光客にも人気のスポットである。またドバイ・クリークでは、数こそ少ないものの、この暑さの中、遊覧船が運行されていた。やはり世界有数の観光地ドバイ、右を見ても左を見ても観光客で賑わっている。私がいるディラ地区のマーケットも観光スポットとして知られているが、他のエリアに比べると、働いている方が多く見受けられる。
そして、こちらが第一の目的地、スパイス・マーケット周辺である。
アーケードの看板には『Grand Souq(グランド市場)』という文字が確認できるが、どうやらアーケードから先はグランド市場になるため、私が今立つ場所こそ、目的のスパイス・マーケットのようだ。確かに先ほどから、とてつもなくカリーな香りが漂っている。Google Mapを開き、現在位置の確認をしていると一人の男性が話しかけてきた。事前情報では、かなり積極的な客引きがあると聞いていたが、早速である。最近はこういう人に身を任すのも新たな発見だということで、彼の誘いに乗り、グランド市場入り口の横にあるスパイス屋さんへと入る。
こちらが連れて来られたスパイス屋さんのようす。
それほど広い店内ではないが、所狭しとスパイスや日本で言うところのお香のような嗜好品が並ぶ。店内のお兄さんは明るく出迎えてくれたが、果たしてこのお店を出るころに、私はどのような感情になっているか楽しみである。まず彼は様々な種類のお香について説明してくれた。
その中にはハッカの結晶があり、それを火であぶることで、鼻を抜ける爽快な香りを楽しむことができる。ハッカの結晶は初めて見たため、私は『これはドラッグですか?』とお兄さんに尋ねたが、そこは厳たるイスラム教徒の国。あまりウケなかった。その他にもサフランを入れた水を試飲させて頂いたり、各スパイスについて細かく教えてくれた。
私は趣味でスパイスカレーを作ることがあるので、スパイスの説明には特に興味があった。その場で割ってくれたシナモンスティックは、日本で手に入るものよりも遥かに香り高いものであった。このお店ではお兄さん特製のスパイス・ミックスを200g購入させて頂いた。お値段はチップも合わせて100ディルハム(約4000円)。少し高い気もしたが、日本で同じ量のスパイスを作ろうとすると、この値段では済まないだろう。
スパイス屋のお兄さんと別れを告げ、グランドマーケット内を進む。
グランドマーケットにもスパイスを扱うお店があるよだ。その他にはドバイの街中で良く見かけるカンドゥーラやヒジャブなども販売されていた。こちらはどうやら外国人向けのお土産のようだ。しかし、私以外の外国人観光客が見当たらない。というのも、この時期のドバイは最も暑いシーズンで、観光客の多くは外出せずに、ショッピングモールやホテルで過ごすのが、一般的のようだ。確かに別日に行ったビーチでは私と監視員のお兄さん以外、誰もいなかった。
そのため、グランドマーケットの店員さんは皆、私にロックオン。『ニーハオ』『アニョハセヨ』『こんにちわ』と声が飛ぶ。しかし既にスパイス屋さんで現金を使い切った私は、手にぶら下げたスパイスの袋を指さし、『もう、買っちゃてるのよ~』感を出すと、皆、少し残念そうな顔はするものの、強引な客引きをされずに済んだ。これはなかなか良い作戦かもしれない。
続いて、ゴールド・マーケットへと行ってみた。
こちらはディラ地区で最も有名な市場の一つである。スパイスやお土産店なども多少確認できるものの、その多くが貴金属やジュエリーを扱うお店である。アーケードの下に並ぶお店はどれも綺麗に整備されているが、その歴史は古く1940年代頃にインドやイランの商人たちが金を扱うお店を開いたことが起源のようだ。
今では世界有数のお金持ちが集まるスポットとなったドバイ。オンシーズンには多くの観光客が訪れる場所のひとつでもあるようだ。
その後もディラ地区の市場を歩いて回る。暑さもさることながら、店員さんからの声掛けも熱い。エジプトのバザールほどではなかったが、結構な量であった。また有名なオールド・マーケットを探していたが、ディラ地区のほとんどがマーケットのため、どれがお目当てのオールド・マーケットが分からない。結局、私は色々なマーケットを回って、写真を撮って、声をかけられて、断ってを繰り返し、ディラ地区を堪能する。
後日、インターネットで調べてみたが、私が最初に訪れたスパイス・マーケットやグランド・マーケットを含めた一帯の歴史あるマーケットを"オールド・マーケット" と呼ぶようだ。
とりあえず2時間ほど市場を回っていた私は最後に市場飯を頂くことにした。オールド・マーケット周辺にもレストランやカフェはあるが、何だか入江沿いに良い感じのレストランがあったので、そちらへ移動することにした。
こちらが今回、市場飯を頂いた『Aden Restaurant』。もう少し市場の人たちが通う、隠れ家みたいなレストランを想像していたが、かなり綺麗な外装である。2階建てで、かなりの席数があるようだ。またテラス席も準備されていたが、この暑さだ。外で食事をする人はいなかった。私もさっさと店内に入る。
良い感じの店内である。中央には長テーブルがおかれ、屈強なアラビアン男子たちが飯を食らっていた。手前のお兄さんが、さすがに風景とは言えない鬼カメラ目線だったため、お顔は伏せさせて頂く。そして何より驚きなのが、店員の多さである。これはドバイのどのお店に行っても感じることなのだが、とにかくバブリーなドバイには人が集まる。働きたい人も集まれば、働かせる店も十分にある。羨ましい限りである。
私も屈強メンズたちと肩を並べ、チキンマンディとアラブサラダを注文した。
チキンマンディはイエメン発祥の料理とされ、中東や東南アジアなどで人気の料理である。スパイスで香りづけられたご飯の上に、チキンがドンっと乗った豪快な見た目。チキンの他にも羊やラクダの肉なんかを使うこともあるようだが、チキンは癖もなく、香ばしくて美味しい。お米が良く進み、多くの日本人が好む味わいである。
一緒に頼んだアラブサラダは国によって多少変わるようだが、キュウリやトマト、パセリなどの野菜にオリーブオイルと複数のスパイスを混ぜたのが、ここドバイでは定番のようだ。辛みと酸味、そして野菜の甘みや旨味とサラダとしては、かなりインパクトのある食べ応えであった。ファストフードやカフェのスイーツが続いた私にとっては良い栄養補給となった。
お値段もスープとお水が付いて、1500円以内とボリュームも懐も大満足な市場飯であった。
今回、ドバイの滞在期間が短かったため、それほど長居できなかったが、他にも様々なマーケットがあるディラ地区。これほど一つの場所に様々な市場が集まるエリアもなかなか珍しい光景であった。是非、次回ドバイを訪れた際には他のマーケットも覗いてみたいところだが、今度はオンシーズン(涼しい季節)に訪れたい。
最後に。スパイス・マーケットで購入したスパイス・ミックスは日本に帰ってから、チキンカレーにして食べた。
お兄さんがマイルドにミックスしてくれたスパイスは私の辛くないカレーには丁度良かった。何より日本で購入できるスパイスよりも風味が良く、もう少し買っておけばと後悔するほどであった。
おわり。
Deira Market
Multiple markets in the Deira area of Dubai. This area is lined with typical Dubai products such as spices and traditional products.
Location: Dubai UAE
Shooting date: 8/2023
Category: Market & Night Market
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