ウーテマン鋳造所/Wieża ciśnień huty Uthemann
【シリーズ 世界の廃墟】
2023年5月某日、ポーランドのカトヴィツェにあるウーテマン鋳造所の廃墟を訪れた。この廃墟はカトヴィツェの郊外にあり、滞在中、たまたま見つけた場所である。インターネットの情報では内部の様子が、それほど出回っていなかったので、もしかすると敷地内に入ることは出来ないかもしれないが、せっかくなので、カトヴィツェ滞在の最後の休日に訪れた次第である。
こちらがウーテマン鋳造所の最寄り駅のようす。
カトヴィツェのメイン駅からは二駅ほどしか離れていないが、無人の喉かな駅である。ここから15分ほど歩いた場所に目的の廃墟はある。距離も丁度良く、天候も良好。これは楽しい廃墟探索となりそうだ。ウーテマン鋳造所を目指し、歩き出す。
道中は大型トラックが止まる工場や運送会社の建物が並ぶ。訪れた日が日曜日ということもあり、どこも稼働している様子はない。廃墟探索をする身としては、可能な限り人には会いたくないので、これは好都合である。
15分ほど歩くと、前方にそれらしき建物が見えてくる。
なかなか迫力のある佇まいである。また状態もかなり良さそうだ。この辺りから見ると、何だか鉄道の駅舎にも見えてくる。かなり期待のできる廃墟にテンションを上げ、道なりに進んでいると、その前に気になる建築物が2つ並ぶ。
どうやら煙突と給水塔のようだ。以前に自然公園の給水塔廃墟を紹介させて頂いたが、カトヴィツェには歴史ある給水塔がたくさん残されている。煙突も給水塔もウーテマン鋳造所で使われていた物だと考えられる。こちらも興味深いので、先に探索してみることにした。
まずは煙突のようす。
近づいてみて分かったが、かなり状態は良さそうだ。現役と言われても疑わないほど、欠損箇所などは見当たらない。鋳造所からは少し離れた場所にあるので、もしかすると周辺にあった別施設の煙突の可能性もあるが、地下にある蒸気ボイラーを通して、ここから水蒸気が出されていたとも考えられる。煙突の一番上まで上って覗いてみれば、内側の状態である程度予測は出来そうなのものだが、この高さは決して上りたくないので、探索は終了。
続いて50mほど離れた給水塔を目指す。
ここからの画が美しかった。足元には背丈のある草木が生えており、歩くには少し悪い環境であった。また煉瓦の破片や建物の基礎部分のようなものが確認できた。この事から今歩いている場所にも以前は何かしらの建築物があったものと考えられる。
無事に給水塔の近くに到着する。
塔全体はコンクリートで作られているが、屋根に当たる部分には煉瓦が葺かれており、デザイン性を感じさせる。無骨な給水塔も多い中、こちらは、とても美しいフォルムである。
また入り口も解放されており、侵入者にも優しい作りとなっている。私もお言葉に甘え、中へと入ってみる。
内部には、当時を感じさせる物は特に残されておらず、すっからかんである。足元には大きな穴が開いており、深さも結構あったので、落ちないよう注意が必要であった。
また上へと繋がる階段は落とされていた。是非、あの美しい屋根まで上ってみたかったが、グランドフロア以上の探索は難しいようだ。塔内部の写真を数枚収め、給水塔を後にする。
続いては本日のメインであるウーテマン鋳造所だ。
正直、ここ何年かで見た廃墟の中でも1位、2位を争う美しさである。左右対称に作られた横長の姿と歴史を感じさせるデザイン性。状態も良く、中央の塔にある時計もクラシックでカッコいい。早速、内部への侵入ルートがないか近づいてみる。
いくつかの窓ガラスは割られていたが、内側から板が打ち込まれていた。窓からの侵入は難しそうだ。何よりも窓枠は、かなりの高さがあるので、塞がれてなくとも、私の運動神経では決して届くことはないだろう。
また入り口だったと思われる箇所も確認できたが、こちらはコンクリートのブロックで塞がれていた。
ご丁寧に防犯カメラも、たくさん設置されている。
ちなみにウーテマン鋳造所は1834年に亜鉛製錬所として開設され、20世紀初頭には2000人以上が働いていたとのことだ。そして戦争や公害による健康被害などポーランドの産業の中で様々な歴史を残してきたウーテマン鋳造所は、1978年稼働が停止されたとのことだ。
是非とも、その歴史ある建物の内部を見たいところだ。とりあえず外観を周回する。先人の方が作った侵入ルートが1か所でもあることを願うばかりだ。
とは言え、外観を見ているだけでも見ごたえのある建物である。近づいて、その状態の良さが改めて分かった。また壁一面に描かれた大型のグラフィティは芸術的なものが多く、楽しむことができた。
グラフィティに見とれていると何だが、音楽が聞こえてくる。
音楽が聞こえる場所に向かうと、3名の若人がいた。何かの作業を行っている彼らは、開錠された扉からウーテマン鋳造所を堂々と出入りしていた。調べてみると、現在はイベントなどで貸し出しされているようで、彼らも、その準備を行っている様子だ。せっかくなので、中に入れてくれないか交渉してみたものの、突如現れた【謎の『中に入れてくれ…』アジア人おじさん】を易々と受け入れてくれることはなく、私の探索は終了した。
私は1時30分ほど滞在し、ウーテマン鋳造所を後にした。
とても美しい状態で残された歴史ある工場の廃墟。是非、内部の探索も行ってみたかったが、こればかりは仕方ない。それでも周辺の探索で結構楽しませて頂いたので、カトヴィツェ滞在を締めくくるには素晴らしい体験であった。これからも世界中の素敵な廃墟を訪れて行きたい。
おわり。
Wieża ciśnień huty Uthemann
Historic factory ruins left in the industrial city of Katowice. I wasn't able to go inside, but it was worth it just to see the beautiful exterior and the water tower.
Location: Katowice Poland
Shooting date: 5/2023
category: Abandoned Places
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