死者の街-お墓編-/City of the Dead: Cemetery
2023年3月の某日、エジプトのカイロにある「死者の街」と呼ばれる場所を訪れた。この場所は、カイロの中心地より東に位置する墓地であり、イスラム帝国の時代に設立された歴史ある場所である。カイロ市内に残された城壁の外に広がる死者の街は、主に2つのブロックに区分されており、私は北墓地と呼ばれるエリアを調査することにした。
こちらが死者の街の様子。
想像していた雰囲気よりも、実際に訪れた死者の街はよりクールな印象であった。なお、「死者の街」という名前は海外で付けたものであり、エジプトでは「アルカラファ」または「アルアラファ」と呼ばれている。
日本でも同規模の墓地はいくつかあるが、死者の街には、まるで家のような建物が並んでいる。これはエジプトのイスラム文化において、家族のお墓というのは重要な存在であり、その場所に人が集うよう家族毎に立派な建物が形成されているとのことだ。その建物が並ぶ景色から「死者の街」という名前が付けられたのだろう。
ちなみに私が撮影している場所の背中側はこんな感じである。
車が激しく行き来する整備された道路と奥には立派な建物が確認できる。カイロ市街では、この場所の様に風景のコントラストが激しい場所はいくつか存在するが、ここは印象的な場所のひとつであった。
早速、死者の街へと入ってみる。
敷地内にも整備された道があり、その道に沿う形でたくさんの建物が並ぶ。この場所がお墓だと知らなければ、間違いなくローカルな住宅地だと勘違いしてしまうだろう。しかし、その考えは間違えではなく、実際に死者の街には多くの人々が住んでいる。情報によると、その多くは貧困層の方々であり、カイロ市街で住宅不足が進むなか、この死者の街に移り住んだとのことだ。彼らの生活風景については、また別の記事で紹介させて頂きたいと思う。
引き続き、死者の街の探索を行う。
写真の様に、大きな道路であれば車の往来が結構ある。死者の街の住人が利用していることもあるようだが、一般道路の抜け道の様に使っている人もいるようだ。スラムでは住人以外はそのエリアに寄り付かないという風潮も見られるが、この死者の街は少し違うようだ。
ちなみにお墓が眠る建物は中に入れる場所もあったりなかったり、様々である。
それがどの様に区別されているか分からないが、写真のように施錠されている建物も多く確認できた。本来のお墓としての役割であれば、家族や関係者以外が立ち入れないのが、正しいだろう。
しかし、中には開門されている箇所もあり、実際に中へと入ることができた。
こちらは実際に敷地内にあるお墓の様子。この場所は、近くにいたお父さんが案内してくれた場所である。写真撮影の許可も頂き、この墓地の歴史について説明してくれた。英語は不慣れな様子であったが、お父さんの数倍英語を理解していない私は結局、何を言っているか分からなかったが、とにかく歴史深いとのことだ。
ちなみにカイロでは、このような正規のガイドじゃない方でも、強烈にお金を請求してくる。しかし、このお父さんは私が持参したカントリーマアムで手を打ってくれた。とても紳士的である。
その後も私は死者の街を歩き回り、その独特な世界をカメラに収めていく。
最後に私がいる北墓地で、ひと際目立つ霊廟(れいびょう)を訪れてみることにした。
死者の街には霊廟やモスクがいくつか確認できるが、私が目的とする霊廟は1348年以前に建てられたらしく、その歴史は死者の街が形成され始めたころとほぼ同時期である。
こちらが、その霊廟の様子。
外観に損傷が確認できるが、施錠されている部屋もあり、現在も霊廟としての役目は果たしているようだ。こちらはアル・ナシル・ムハンマドさんという方の奥さんのための建てられたものであり、今も彼女の魂が眠る場所である。700年近くもの間、この場所で役目を果たす、その霊廟は大きさ以上に、この死者の街で存在感を感じる建物であった。
私は2時間ほど滞在し、死者の街をあとにした。
今回のカイロ滞在で、最も訪れてみたかった死者の街。いままで世界中の墓地を見て回ってきたが、このような街の様に建物で形成された墓地は見たことはなく、とても良い体験であった。これからも世界中の墓地を訪れていきたい。
おわり。
City of the Dead: Cemetery
A cemetery like a city. There are many buildings there and it is also a place to visit historical mausoleums and mosques.
Location: Cairo Egypt
Shooting date: 3/2023
category: Cemetery & Funeral
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