難破船"MSメディテレニアン・スカイ"/MS Mediterranean Sky
【シリーズ 世界の廃墟】
2022年11月某日、ギリシャのアテネ郊外にある"MSメディテレニアン・スカイ"という難破船を訪れた。こちらの船はクルーズフェリーとして活躍していたが、2002年にアテネのエレウシス湾で浅瀬に乗り上げ転覆。船体の半分を沈める形で、現在も同じ場所に残されているらしい。廃墟とは少し違うが、これはなかなか興味深いということで、アテネ駅から電車に乗り、最寄駅のネア・ペラモス駅へと向かう。
こちらがネア・ペラモス駅の様子。
アテネからはそれほど離れた場所ではないが、住宅以外は特に何もない場所である。しかし近くにはマリーナやビーチもあり、オンシーズンには、人々で賑わう場所なのかもしれない。目的の難破船は、ここから8kmほど北東に進むとある。帰りの電車も予約済みなので、時間にも追われながら歩き始める。
道中はこの様な道が続く。歩行者もいなければ歩道もない。しかし、車は結構通る道なので、注意が必要である。何よりこのエリアは野良犬が多く、部外者の私に警戒する犬もいた。野良犬対策は東南アジアで取得済み。こちらも一眼レフカメラをぶん回して威嚇してやる。お互い良い距離を取るのが大事である。
ちなみに右手にはエレフシナ湾が広がる。
このエレフシナ湾に目的のMSメディテレニアン・スカイがある。廃墟などの不確かな情報については、GoogleMapの座標がズレていることもあるので、見逃さないよう時折、海を見ながら歩く。少し雨が降りそうなのも心配だが、順調に進む。
ネア・ペラモス駅から1時間ほど経過。
道路には、もう人間が歩くスペースはなく、通過する車から冷ややかな目を浴びせながら、肩を窄ませ歩く。途中、『乗っていくか?』と優しいお兄さんが声をかけてくれたが、恐らく目的のMSメディテレニアン・スカイは近いので、丁重にお断りさせて頂いた。
そしてついに目的のそれが姿を現す。
大きな客船らしき物が半分、沈没した状態で確認できる。MSメディテレニアン・スカイで間違えないようだ。ここからでは少し遠いので早速、近づいてみる。この先はフェンスで囲まれていたが、道路標識を消防署のポールみたいに使い、難なく入ることができた。
敷地内は舗装されているようだが、劣化も目立つ。ここで一匹の野良犬が茂みから吠えてきた。廃墟などの敷地内にいる野良犬は街にいる犬と違って、縄張り意識が強く、結構、襲われることもある。以前、中国の工場廃墟でグルグルと周りを囲まれた時は本当に怖かったが、とりあえずここにいる彼は大丈夫そうだ。
廃線の跡を渡り、船に近づけそうな場所を探す。ちなみこの線路部分は橋の様になっており、万が一、ここが廃線ではなく、電車が後ろから来たら、スタンド・バイ・ミーは避けられないだろう。
最後に斜面を下り進むと、小さな岸辺に出る。そこから見たMSメディテレニアン・スカイの姿がこちら。
写真が遠目になってしまい、その迫力が伝わりにくいが、かなり大きな船舶であることが現地に来て分かった。船体は綺麗に半分が沈んだ状態であり、浮いている面も海水により、かなり錆びついている様子だ。船の後部には救命ボートが残されているが、当時はどうやって逃げたのだろうか。もしかすると乗客はいなかったのかもしれない。また船体にはグラフィティが描かれており、あそこまで行った強者がいることに驚きである。
残念だが、これ以上近づく術がないため、ろくな調査はできなかった。しかしアテネ滞在中に訪れてみたいと思った場所に来れたことは満足である。
崖を上がると、さきほど吠えていた犬が私のところまで来てくれた。
動物図鑑のような凛々しい立ち姿の彼が出口までの道案内をしてくれた。最初は吠えられて怖かったが、良い奴だと知れて良かった。
とは言え、もうあの狭い道を歩きたくないので、帰路は廃線に沿って駅を目指す。
ビックサンダーマウンテンの様なこの道が何だか好きだ。
私は30分ほど滞在し、難破船"MSメディテレニアン・スカイ"が沈む、この場所を後にした。
徒歩で訪れるには面倒な場所ではあったが、その姿が視界に入ってきた時は感動は忘れないだろう。これからも世界中の様々な場所を巡りたい。
最後に……。
ネア・ペラモス駅の近くに、何だか素敵な廃工場があったが建物の中から鋭い目をしたお兄さんたちが、こちらを警戒していたので探索は即中止。かなり規模感があったので残念だが、仕方ない。
おわり。
MS Mediterranean Sky
A passenger ship sleeping in the outskirts of Athens. The hull is half sunk, but it showed me a very powerful figure.
Location: Athinon Korinthou Greece
Shooting date: 11/2022
category: Abandoned Places
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