ホテル・ベルヴェデーレの廃墟/Hotel Belvedere

【シリーズ 世界の廃墟】

2022年10月某日、クロアチアのドゥブロブニクにあるホテル・ベルヴェデーレの廃墟を訪れた。この廃墟はドゥブロブニクの旧市街地より徒歩20分くらいのところにあるホテルの廃墟であり、クロアチア紛争で被害を受けて閉業したホテルである。そして廃墟マニアの間では良く知られた場所であり、今回、ドゥブロブニクを1か月ほど滞在する機会があったので訪れた次第である。

こちらが旧市街地付近の様子。

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この辺りは歩道が狭く、車や観光客と良くすれ違うので、歩く際には幾分の注意が必要である。またこの先は観光客が特に訪れる場所ではないので、私だけ逆走する形で進む。廃墟探索ではあるあるのことだが、できるだけ目立たずに行動したいものだ。ちなみに、旧市街地の横にあるバニェビーチはとても綺麗であった。

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旧市街地を背に歩くこと20分。目的のホテル・ベルヴェデーレが姿を現す。

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予想よりも状態は良く、まるで日曜日の工場のようだ。入り口の門は施錠されており、簡単には侵入できないようだ。基本的には門などに施錠されている場合は、侵入を諦めるよう心掛けているが廃墟好きとしては、何とか内部も見てみたいものだ。

ここからの侵入は諦め、他の入り口を探す。

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地下へと続くスロープを発見する。恐らく当時は駐車スペースとして使われていた場所であろう。ちなみに現在は猫たちの秘密基地になっているようだ。

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餌や水が置かれていたので、現在も誰かが出入りしているようだ。これは速やかに探索を終える必要があるかもしれない。猫たちの奥に門があるようだが、あまり近づくと驚かせてしまうので、別の入り口を探す。

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何だか良い感じの窓を発見する。綺麗にガラスが外されているので、恐らく侵入者たちの正規の入り口かもしれない。早速、80歳の腰にムチを打ち、ホテル内部へと入る。

着地点が私の身長よりも幾分高さがあったので、足腰に小さなダメージを受ける。そして、こちらが侵入したエリアのようす。

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かなり広い空間である。天井や内壁はなく、まるで建設途中のようだ。ホテル・ベルヴェデーレは、1990年以前に営業していたことは確認できているので、もしかすると紛争後に、ある程度の改修が行われた可能性もある。

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ぽつんと残された出窓から見えるアドリア海はとても美しかった。紛争中には、あの海から容赦なく砲撃されたとのことだ。続いて横にあるバルコニー部分に出てみる。

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こちらはガラスなどもあり、当時の面影をすこし残している。このバルコニーも幾分、広さがあったことや円形の外観がバーカウンターの様にも見えてくる。もしかすると先ほどの広いエリアと含め、アドリア海を一望できるダイニングフロアだったのかもしれない。

数枚写真を撮り、このエリアを抜けて奥の部屋へ進む。

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雰囲気のある螺旋階段が現れる。まるでスポットライトに照らされたようだ。手すりは無く、恐怖仕様となっているが、慎重に螺旋階段を上がる。

上のフロアに着き、道なりに進むと客室エリアへと繋がっていた。

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長い廊下に沿って、たくさんの客部屋が確認できる。想像以上に奥行きがあり、入り口付近で感じたホテルの全体像よりかなり大きいホテルのようだ。壁紙が良い感じに劣化しており、廃墟として素晴らしい雰囲気である。

適当な客室へと入ってみる。

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こちらの客室は、かなり状態が悪いようだ。バスルームの壁や扉は破壊されており、床に散乱していた。もしかすると当時の爆撃による影響かもしれない。扉が抜けた床を塞いでおり、踏んだ瞬間に落下するということもあるので十分に注意が必要である。

続いて別の客室に入ってみる。

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こちらの部屋は生々しい傷跡が残されていた。壁や天井に開いた無数の穴は恐らく爆撃により、飛び散った破片などがクラスター爆弾の如く、打ち付けたと考えらる。

他にも焼け焦げた客室などもあった。

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床や柱はススになっており、危険な状態であったので、室内の奥には進まず手前から撮影を行う。続いて近くにあった非常階段を使い、違うフロアの客室エリアを調査する。

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太陽が入らないエリアでは、少し緊張感があった。たまに客室で休んでいる鳩たちの物音にビビりながら進んでいく。ドゥブロブニクは他のエリアに比べるとホームレスの方は少ないので遭遇する可能性は低いと思うが、その点も注意が必要であった。

暗い廊下を抜けると、エレベーター前に置かれたバスタブを発見する。

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何とも似つかない場所に置かれている。恐らく再開発に向け作業が進んだが、資金不足により計画が頓挫した可能性もある。立地としてはかなり良い場所なので、今後、再開発の可能性もあるかもしれない。

その後も客室エリアを中心に探索をするが、迷路のように入り組んでおり、結果的に迷子になってしまう。

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適当な部屋に入ると、何だかたくさん物が残された場所を発見。物が多すぎて、正直、何の部屋であったかは不明である。この部屋は埃っぽさもあり、ハウスダストアレルギーの私にとってはかなり息苦しくなる部屋であった。

何だか掃除機の様なものもあった。

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さらに奥へと進むと、何だか従業員のロッカールームのような場所を発見する。

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部屋には漢字で書かれた書物が落ちていた。もしかすると当時働いていた中華系の方の持ち物かもしれない。このように色々と想像させてくれるものが落ちているのは廃墟探索の楽しみ要素である。

その後も写真を撮りながら、ホテルを進んでいくと何とか猫たちがいた場所の近くまで帰ってくることができた。

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私は2時間ほど滞在し、ホテルベルヴェデーレの廃墟を後にした。

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久々に脱出に苦労した廃墟であったが、これほど大規模なホテルを探索できたのは良い経験である。今回、ドゥブロブニクの滞在ではいくつかのホテル廃墟を見てきた。バックボーンを思うとあまり興奮するのは不謹慎な気もするが、楽しめたのも事実。廃墟好きにとってはなかなかのジレンマである。兎にも角にもドゥブロブニクは素晴らしい場所である。

おわり。

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Hotel Belvedere

Ruins of a hotel near the old town of Dubrovnik. This place, where the scars of conflict still remain, is very thoughtful.

Location: Dubrovnik Croatia
Shooting date: 10/2022
category: Abandoned Places
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