ブレストヴァツ・サナトリウム／Brestovac Sanatorium

【シリーズ世界の廃墟】

2022年9月某日。
クロアチアの首都ザグレブにあるブレストヴァツ・サナトリウムの廃墟を訪れた。

この廃墟はザグレブの北に位置するメドベドニツァ山にあり、1909年から1968年までの間、呼吸器疾患の患者の療養所として使われていた歴史深い廃墟である。今回ひと月ほどザグレブに滞在する機会があったので訪れることにした。

こちらがメドベドニツァ山の麓の様子。

麓にはケーブルカーの駅があり、これを利用することで、簡単にメドベドニツァ山を登ることができる。ちなみに私が目的するブレストヴァツ・サナトリウムは山間にあるミドル駅で降りる必要があるため、誤って山頂まで行かないよう注意が必要である。

往復のチケット代、125クーナ（約2500円）を支払い、ケーブルカーに乗る。

ケーブルカーから見える景色は自然豊かで、とても素晴らしかったが、高さもあり、結構怖かった。20分ほど乗車していると私の目的である中間駅に到着する。一緒に乗車していた夫婦は『なんでコイツこんなところで降りるのだろう？』と思っただろう。

こちらが中間駅の様子。

ここには、私が目的とするサナトリウムの廃墟以外は特に何もないため、降車する人は見かけなかった。クライミンググローブとカメラを準備し、ブレストヴァツ・サナトリウムを目指す。

道中はまさに山道といった感じの景色が続く。ブレストヴァツ・サナトリウムとケーブルカーの駅は目と鼻の先にあるのだが、間には高低差のある斜面が立ちはだかり、1kmほど迂回する必要があった。

中間駅から歩くことは15分。木々の向こうに建物を確認する。

年季を感じさせる古い階段。その奥から顔を覗かせるコンクリート剝き出しの建築物。ブレストヴァツ・サナトリウムで間違えないようだ。驚いたことに、辺りには侵入を禁ずる柵や看板は特に確認できなかった。スペインではサビノサ・サナトリウムの廃墟に入ることができなかったが、ここはなかなか期待できそうな雰囲気である。

早速、建物に近づいてみる。

近づいて気付いたが、想像以上の劣化である。窓ガラスどころか、外壁や装飾など当時を感じさせる物は一切なかった。見た感じでは建築途中で放置された頓挫系の廃墟のようだ。ちなみにこのブレストヴァツ・サナトリウムはサバイバルゲームの会場として貸出しているようなので、チューンアップされた可能性もある。

これは内部がどの様な状態か気になるところだ。外観の写真をカメラに数枚収め、中へと進む。

内部も外観と同様に何もない状態だ。この手の廃墟において、当時を感じさせてくれる資料や機材を見るのが魅力のひとつであるが、ここまで何もないのは珍しい。少し残念な気持ちもあるが、引き続き調査を進める。

階段があったので上がってみる。

上のフロアも特に何もない状態であった。

冒頭でも説明したとおり、ブレストヴァツ・サナトリウムは1968年に療養所としての役目を終え、閉設された。廃墟となる建物は当時の設備や建物自体を残したまま、所有者が責任を放棄し、長い年月、放置されていることが多い。しかし、ここは療養所の閉設と共にリフォームをするため、既存の基礎部分を残し、ある程度、解体が進められたと考えられる。事実、閉設後に老人ホームなどとして使われる案もあったようだ。

しかし、肝心の基礎部分も閉設から50年以上放置されていることもあり、かなり劣化が進んでいるようだ。床や屋根は一部、抜けているところもあり、普通に探索していても、少し危険を感じるほどであった。

安全を確保しながら探索を続けていると、入り口と逆方向のあたりに、渡り廊下のような場所を発見する。

長い通路の先には、広大な土地を活かし、たくさんの建物が作られていた。山間にあることから医師や看護師の住居とも考えられるが、サナトリウムの患者さんには、結核の方もいたようなので、隔離病棟のような場所も設けらえていた可能性もある。

こちらも本館と同様に当時を感じさせる何かが、残っている様子はなかった。しかし、良い塩梅に緑化が進んでおり、廃墟としては魅力的な姿となっていた。

私は2時間ほど滞在し、ブレストヴァツ・サナトリウムを後にした。

今回、ザグレブの滞在において、存在を知ったサナトリウムの廃墟。サナトリウムや病院の廃墟は前々から興味があったので、内臓がなかったのは、少し残念であった。しかし、自然に囲まれた美しいブレストヴァツ・サナトリウムの姿は決して忘れることはないだろう。

これからも世界の素敵な廃墟の探索を続けて行きたい。

おわり。

Brestovac Sanatorium

Ruins of a sanatorium deep in the mountains of Zagreb. The condition is very bad, so be careful when exploring.

Location: Zagreb Croatia
Shooting date: 9/2022
category: Abandoned Places

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