ハジュマスカーの砲兵兵舎/Hajmaskér Barracks
【シリーズ 世界の廃墟】
2022年6月某日。
ハンガリーのハジュマスカーにある砲兵兵舎の廃墟を訪れた。
この廃墟はハンガリーの首都ブダペストより南西に100kmほど進んだハジュマスカーという町にある廃墟だ。1901年に当時ハンガリーの支配国家であったオーストリアの指示により砲兵の訓練施設として建設されたとのことだ。
これはかなり興味深い廃墟だということで、鉄道に乗りブダペストからハジュマスカーと向かう__。
こちらがハジュマスカー駅の様子。
ブダペストからハジュマスカー間の線路が一部工事中ということで、途中の駅でバスに乗り換える必要があった。これはヨーロッパの田舎ではよくあることだ。ハジュマスカー駅は小さな駅ではあるが、駅周辺には住宅が続き、人口はそれなりにいるようだ。
早速、GoogleMapを頼りに砲兵兵舎の廃墟を目指す。
道中、特に問題はなかったのだが、やはり観光地でもないこの場所に現れたアジア人に近所の人と犬たちは敏感に反応した。恐らく砲兵兵舎に向かうこともバレているだろう……。時刻は午前11時。思ったより時間が経過してしまったため、状況によっては兵舎内の調査は難しいかもしれない。
ちなみに駅から目的の廃墟までにも幾つかの見どころがあった。
何だか素敵な建物だが、こちらも砲兵兵舎と同時期に建設された建物だ。ヨーロッパでは100年や200年の建物が現役で使われることも珍しくないことだが、こちらの建物もリノベーションし、現在はパブリック施設として使われているようだ。
こちらは完全に廃墟になっているようだ。
魅力的な廃墟であるが、今回の目的は砲兵兵舎ということで足早に通過する。
そして駅から歩く事20分。それらしき建物が姿を現す。
何だか凄い期待値の上がる雰囲気だ。そして最後の角を曲がるとハジュマスカーの砲兵兵舎がその全貌を現す。
穏やかな田舎町に突如現れる異質の存在感。想像していた感じとはだいぶ違う形状であり、まるでお城のような佇まいである。
その外観は120年以上経っているとは思えないほどの美しさである。あまり廃墟を他の廃墟で例えるのは芸が無いことだが、私が最も好きな廃墟であるベルギーのミランダ城を彷彿とさせるシルエットだ。
これは是が非でも内部の調査を行いたいところだが、砲兵兵舎の目の前には現役の集合住宅があり、そちらさんの目がかなり気になるところだ。
ちょっとだけ入り口を覗いてみると。
塀は完全に朽ち果て『ようこそハジュマスカーの砲兵兵舎へ!』状態だ。そして私は何かに吸い込まれるかのように内部へと入っていた。
内部に入るとすぐ階段と中庭へ続くゲート、そして1階部分の入り口が確認できる。
これはどこから進んでも面白そうだが、とりあえず1階部分を探索していくことにした。
1階の廊下はこんな感じだ。
大きな窓から良い感じに光が差し込み、雰囲気のある素晴らしい廊下である。どうやらこの兵舎は回廊のようになっているようだ。本当にお城のような作りである。そしてその廊下にはいくつもの部屋が面していた。
部屋のスケールは大中小様々、状態も部屋によってだいぶ違っていた。また幾つかの部屋には焚火の跡や寝袋などが置かれており、近所の若者のたまり場や浮浪者たちの棲家として使われていたようだ。今も誰かがいるかもしれないので注意は必要だ。
こちらはトイレ。だと思ったのだが便器が確認できず、もしかするとシャワー室だったのかもしれない。それにしてもかなり新しい時代の作りである。もしかすると兵舎の後に何らかの施設として使われていた可能性がある。
その後も1階にあるすべての部屋を調査する。正直これほど部屋数がある廃墟は初めてかもしれない。このペースだと夕方くらいまでここにいることになってしまいそうなので、少しペースを上げて調査をする。
1階部分にはこんな部屋もあった。
大きなステージが確認できる。後日インターネットで調べてみると兵舎には劇場や病院、学校などがあり、生活で必要なものはすべてこの兵舎内で済ますことができたようだ。これだけ大きい施設であることも納得だ。
劇場の近くに階段があったので上ってみる。
2階席から見たステージの様子。
当時はどんな劇が行われていたのだろうか。ちなみにステージの真ん中に見えるのはマットレスだ。とんでもないところを棲家にした者もいるもんだ。
その後も30分ほど1階の捜査する。
中庭は草が凄かったので、とりあえず入り口に戻り、今度は2階へと進む_。
この階段もまた美しい。
2階のフロアはこんな感じになっている。
1階と同様に長い廊下が続く。また1階と比べると小さな部屋が規則正しく並んでいたので、2階はもしかすると兵士たちの部屋になっていたのかもしれない。これは一つずつ見ていくと無限の時間が必要なので、3階へと上がる。
どうやらこの階段で上がれるのは3階までのようだ。3階も2階と同様に狭い部屋が続く。幾つか部屋を見ていくが、入り口正面から見えた高い塔にはどうやって行くのだろうか。
窓や壁の隙間から塔の位置を確認し、その付近を調べてみると__。
壁の中から突如階段が現れる。恐らくこの階段が塔へと続いているだろう。それにしても壁の穴から現れる隠し階段。ゼルダの伝説みたいな展開だ。
階段を上がると間もなく塔への入り口があった。
こちらが塔内部の様子。
広い空間だが特に何もない。横を見てみると……。
続きはあの螺旋階段で上るようだ。錆びついた階段は一部手すりが崩壊しているなど、なかなかのスリルだ。
これは落ちたら洒落にはならないだろう。慎重に階段を上がると塔の上部へと着いた。
中央に大きな柱のような物があり、かなり狭い空間だ。こちらも後にインターネットで知ったのだが、この塔部分は貯水タンクが設置されており、大きな柱だと思っていた物はどうやらタンク部分だったようだ。
このハジュマスカーの砲兵兵舎で一番高いところからの景色はやはり綺麗であった。
私は2時間ほど滞在し、ハジュマスカーの砲兵兵舎の廃墟を後にした。
これほど大規模な廃墟の内部をじっくりと調査できたのは久しぶりだ。もう少し当日の品物などがあったらより良かったのだが、これだけ歴史のある建物がこんな良い状態で残っているのは素晴らしいことである。これからも安全第一で廃墟探索を楽しんでいきたい。
おわり。
Hajmaskér Barracks
A historic building that remains in Hungary. There are countless rooms and it is a place where you can enjoy exploring.
Location: Hajmaskér Hungary
Shooting date: 6/2022
category: Abandoned Places
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