森にあるトンネルの廃墟/Paneriai Tunnel
【シリーズ 世界の廃墟】
2022年1月某日。
リトアニアのビルニュスにあるトンネルの廃墟を訪れた。
この廃墟はビルニュス駅から電車で少し南に行った郊外にある歴史のあるトンネルの様だ。現在はその役目を終え、森の中にひっそりと佇んでいるとのことだ。
早速、ビルニュス駅からトンネルの最寄り駅であるパネリアイ駅へと向かう__。
こちらがパネリアイ駅の様子。
とくに何かある駅ではないが、駅の周辺には数件の民家があり、駅を利用する人も結構いた。
ここから少し歩いたところに目的のトンネルがあるはず。Google Mapを頼りに歩き始める___。
道路は整備されているものの、完全にアイスバーンと化しており、雪に慣れていない私は豪快に転倒してしまった。一週間ほど首と背中に痛みを抱えることとなった。
10分ほど歩くと、なんだか森みたいになってきた。
ここら辺に来ると歩いている人は誰もいなかったが、割かし開けている森なので、それほど怖いという感じではなかった。
さらに進むと何やらそれらしき物が目に入る。
間違えなくトンネルだ。かなり雰囲気の良い廃墟にテンションがあがる。
近づくとその迫力は更に増した。
ロケーションも物も廃墟としては完璧な美しさである。日本でも幾つかのトンネル廃墟に行ったことがあるが、それらとはまた違う雰囲気の廃墟である。
トンネルの内部を覗いてみる。湿気の影響などによる多少の風化は見受けられるも、レンガはしっかりと組まれており状態は悪くないようだ。
このトンネルは1860年頃に皇帝アレクサンドル2世の命によって作られた歴史のあるトンネルである。当時はビリニュスとポーランドのワルシャワを結ぶ鉄道が走っており、リトアニアで最初のトンネルという記事も確認できた。
20世紀に入るとナチスドイツやソ連の侵攻に次々とあい、敵軍によりトンネルが破壊される計画もあったようだが、難を逃れ今もここに健在している。
ちなみに現在はコウモリたちのシェルターとして使われているようだ。
絶滅危惧種のコウモリを含む6種のコウモリたちが越冬に使っているとのこと。
とりあえずコウモリたちの迷惑にならない程度にお邪魔してみることにした。
トンネルの内部は入り口の光が差し込み、肉眼で見えないほどの暗さではなかった。また数十メートル先に大きな壁があり、それ以上進むことはできないようだ。恐らくコウモリたちはあの壁の向こうにいるのだろう。
足元を見ると珍しいものがある。
地面にたくさんの氷の柱が立っている。恐らく上から落ちてくる水滴が溜まって固まったものだろう。地面から生える氷柱とは面白い。
せっかくなので、トンネルの周囲も探索してみる。
上から見たトンネルの様子。
とくに何があるわけでもなかったが、この場所は第二次世界大戦中に多くのユダヤ人が虐殺された場所の一つだったようだ。パネリアイ駅からこのトンネルとは逆の方へ進むと彼らを弔う石碑が建てられている。
私は1時間ほど滞在し、この場所を後にした__。
長い歴史において様々な危機を乗り越えて今なお、この森に残る美しいトンネル。私の記憶に深く残るそんな廃墟であった。これからも世界中の美しい廃墟をたくさん訪れたい。
おわり。
Paneriai Tunnel
It was a tunnel where sad history sleeps. It is now home to bats.
Location: Vilnius Lithuania
Shooting date: 1/2022
category: Abandoned Places
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